平石法律事務所

解決事例

交通事故

●後遺障害の存否に争いのある損害賠償請求訴訟において、後遺障害が認められた事案

■相談内容

依頼者は、自動車を運転中に追突事故により受傷し、頚部痛、めまい、嘔吐等の症状を発症し、頚部挫傷、膝蓋骨亜脱臼後などと診断された。
入院治療により上記症状は改善したが、途中から歩行時に膝の痛みが出るようなった。検査の結果、膝蓋軟骨の損傷が見つかり、切除手術を受けたが、膝の拘縮が改善せず、可動域制限の障害が残った。

しかし、相手方保険会社は、事故と膝の障害との因果関係を否認した。

■事件処理の結果

相手方に対する損害賠償請求訴訟を提起した。相手方は、膝の痛みが入院後一定期間経過後に出てきたことから、膝の後遺障害の因果関係を否認した。そこで、専門医による鑑定を申し立てた。

依頼者を診察した鑑定医は、依頼者の初診時から膝関節の打撲外傷が認められたこと、事故直後は中枢神経系障害が表面化し、膝関節の障害はそれ程認知しなかったと推測されることなどを理由に、因果関係を認める鑑定意見を述べた。
裁判所もこれを採用して、相手方に膝の後遺障害に基づく損害の賠償を命じた。

■ポイント

依頼者が受診した病院の医師は、膝の後遺障害について事故との因果関係を肯定していたが、依頼者の主治医の見解だけでは客観性に欠けることから、中立な専門医による鑑定を申請した。
そのことが、結果的に依頼者に有利な判決に結びついたと考えられる。

●高次脳機能障害の有無に争いのある損害賠償請求訴訟において、高次脳機能障害が認められた事案

■相談内容

依頼者は、自動車を運転中に相手方運転の自動車と衝突し、外傷性くも膜下出血、脳挫傷などの傷害を受けた。
当初は意識障害や見当識障害、記憶障害があったが、入院治療によりこれらは改善した。しかし、退院後も社会的行動障害が残り、日常生活及び社会生活を営む上で支障が生じた。
依頼者の主治医は、高次脳機能障害と診断したが、相手方保険会社はこれを否認した。

■事件処理の結果

相手方に対する損害賠償請求訴訟を提起し、高次脳機能障害の診断基準に従って、脳外傷による脳の器質的病変の存在を医師の診断書や検査画像により立証した。また、社会的行動障害の存在を依頼者本人や家族、知人の説明により立証した。

その結果、裁判所は、依頼者の高次脳機能障害を認定し、相手方に後遺障害に基づく損害の賠償を命じた。

■ポイント

相手方は、依頼者の知能検査や記憶能力検査の結果がほぼ正常だったことなどを根拠として高次脳機能障害を争ったが、高次脳機能障害の診断基準に該当する依頼者の症状を丁寧に主張・立証した。

その結果、裁判所は、相手方の主張する検査結果は客観性に劣り参考程度にすぎないとして、依頼者の高次脳機能障害を認定した。

●対面信号機の灯火の色に争いのある損害賠償請求訴訟において、依頼者の主張が認められた事案

■相談内容

依頼者は、信号機により交通整理されている十字路交差点の右折車線の先頭に停車し、対面信号機の灯火が赤色から右矢印に変わったのを確認して交差点に右折進入したところ、対向車線を直進してきた相手方車両と衝突した。

相手方は、自車の対面信号機の灯火は青色であったと主張し、損害賠償請求訴訟を提起した。

■事件処理の結果

法廷における当事者双方の尋問の結果、双方の車両の衝突位置や衝突後の停止位置などの事故状況に関する依頼者の供述は事故当時の客観的状況と合致しているのに対し、相手方の供述は客観的事実と整合しなかった。

その結果、相手方が赤信号で交差点に進入したと判断され、依頼者に有利な過失割合に基づく判決を得ることができた。

■ポイント

当事者双方の対面信号機の灯火が主な争点であり、ドライブレコーダーの画像や目撃証言等の直接的な証拠が何もない事案であったが、当事者双方に事故発生状況を詳細に答えさせることにより、相手方の供述の矛盾を裁判官に印象づけることができ、有利な判決につながったと考えられる。

労働問題

●労働審判でセクハラ行為に基づく慰謝料請求が認められた事案

■相談内容

依頼者は、職場内の人目につかない場所で、上司から胸や尻を触られるセクハラ被害を受け、会社に被害を申し出た。

会社が上司に対する聞き取り調査を行ったところ、上司は依頼者に話しかけようとして依頼者の肩に触っただけであるなどとセクハラ行為を否認したため、会社は、上司によるセクハラ行為はなかったと結論づけた。

■事件処理の結果

会社を相手方としてセクハラ行為に基づく慰謝料を請求する労働審判を申し立てた。会社は、上司が依頼者の体に触れたことは認めたが、依頼者の服装の乱れを知らせるためだったとし、依頼者の胸に触ったことは否定した。

しかし、依頼者とは持ち場や担当業務が異なる上司が依頼者に接近した理由や依頼者の服装の乱れを指摘するために依頼者の体に触れる必要性、労働審判申立の前後で説明が変遷した理由などを合理的に説明することはできなかった。
その結果、裁判所は会社に対し慰謝料の支払を命じた。

■ポイント

セクハラ行為は、事の性質上、人目を盗んで行われることから、直接的な証拠が乏しいため、被害者自身がセクハラ行為の状況を詳細かつ矛盾なく説明できるかどうかが鍵となる。

さらに本件では、依頼者と上司の職場における担当業務や持ち場の違いから、上司が依頼者の体に触れた時刻および場所に居合わせることの不自然さなどが明らかになったことが良い結果につながった。

相続問題

●死亡直前に解約された被相続人の預貯金の帰属が争われた訴訟において、被相続人の意思に基づく解約であると認められた事案

■相談内容

依頼者は、兄の死亡直前に病室で被相続人の指示を受け、兄名義の預金を解約して、自己名義で預金したところ、兄の相続人(相手方)は、兄には正常な判断能力がなく、依頼者が権限なく兄の預金を取得したとして、依頼者に対し解約された兄名義の預金の返還を求める訴訟を提起した。

■事件処理の結果

兄の病室を訪れ預金解約手続を行った銀行職員の証人尋問の結果、兄は当該職員を認識し、書類に署名し、預金の配分を指示したこと、同席者も兄の意識状態について疑念を述べなかったことが明らかとなった。

また、看護記録中にも、兄に意識障害が生じていることをうかがわせる記載は見当たらなかった。
その結果、裁判所は、兄に正常な判断能力がなかったとする相手方の主張を退けた。

■ポイント

証人として申請した銀行の担当職員の証言から依頼者に有利な事実を引き出すことができた。
相手方は、兄に正常な判断能力がなかったことを立証するため、病院の看護記録を証拠として提出した。そこに記載された兄の意識状態には波があり、預金解約手続が行われた当時兄に正常な判断能力があったことを推認させる記載を指摘した。

その結果、兄の判断能力の存在を認めてもらうことができた。

●死亡直後に解約された被相続人の預貯金を回収した事案

■相談内容

依頼者の兄甲は、死亡直前に親族乙に定期預金の解約を依頼した。乙は、甲死亡直後、甲名義の定期預金を解約した。その後、乙は、甲の相続人である依頼者の兄丙の指示を受け、解約した定期預金を丙の経営する丁会社の預金口座へ送金した。

依頼者も甲の相続人であることから、丙に対し、依頼者の法定相続分に相当する預金の配分を求めたが、丙はこれに応じなかった。

■事件処理の結果

まず、乙が送金した丁会社名義の預金の仮差押えを裁判所に申し立てて保全した。
その上で、丁会社に対する不当利得返還請求訴訟を提起し、勝訴判決を得て、丁会社名義の預金から依頼者の請求債権を回収した。

■ポイント

丁会社に対する不当利得返還請求訴訟自体は勝訴の見込みが高かったが、丁会社には乙が送金した預金以外の財産は見当たらなかった。

丁会社がその預金を費消したり移動したりすれば、依頼者の請求債権の回収が困難になると判断し、急いで仮差押えを申し立てて保全したことが、最終的に依頼者の債権回収につながった。

●遺産の存否が問題となった遺留分減殺請求訴訟において、多額の遺産の存在を主張する依頼者に有利な和解が成立した事案

■相談内容

依頼者の親は生前に多額の預貯金を有していたが、同居の子(相手方)に全財産を相続させる旨の遺言を残して死亡した。そこで、依頼者は、相手方に対し、遺留分減殺請求権を行使した。
しかし、相手方は、預貯金は親がほとんどすべて費消したため残っていないなどと主張した。

■事件処理の結果

相手方に対して依頼者の遺留分に相当する金銭の支払を求める訴訟を提起し、亡親には生前多額の収入があったこと、晩年の亡親の質素な生活ぶり、亡親の預金口座から多額の引き出しが繰り返されていたこと、相手方の暮らしぶりに見合う十分な収入が見当たらないことなどを指摘して、相手方が亡親の預貯金を取得していたと主張した。

その結果、依頼者に有利な条件による和解が成立した。

■ポイント

相手方が亡親の預貯金を取得したことを裏付ける直接的な証拠がなかったため、亡親が生前に多額の預貯金を使い尽くすとは考えられないこと裏付ける事実を主張・立証した。

また、相手方に対して、その生活水準を賄えるだけの収入財産を明らかにするよう求めた。これに対し、相手方から合理的な説明がなされなかったため、裁判官の相手方の主張に対する信用性が全体的に低下したものと思われる。

離婚問題

●夫が自らの不貞行為を隠して離婚訴訟を提起したケースで、夫の不貞行為の立証を試みた結果、依頼者に有利な和解を実現できた事案

■相談内容

依頼者は、長期間別居していた夫(相手方)から離婚訴訟を起こされた。相手方は、離婚原因として、依頼者との性格の不一致による夫婦関係の破綻を主張した。
これに対し、依頼者は、相手方の不貞行為が原因であると主張したが、相手方は不貞行為を否認した。

■事件処理の結果

相手方の不貞行為の根拠は匿名の第三者から依頼者への通報しかなかったが、不貞相手とされた女性が勤務先に届け出ている住所が相手方の住所と同一であること、依頼者方の駐車場に停めてある車両の所有者が当該女性の親族であること、相手方の前住所と当該女性の前住所が近いこと、相手方宅の近くで相手方と当該女性が一緒にいたことなどを主張・立証した。

その結果、最終的には、依頼者が相手方から解決金や財産分与を受けることなどを条件に離婚に応じる和解が成立した。

■ポイント

相手方の不貞行為の唯一の情報を頼りに、相手方及び不貞相手の身辺を丹念に調査して不貞行為を推認させる事実を次々と発見し、不貞行為を否認しきれない状況に相手方を追い詰めた。

その結果、依頼者に有利な条件での離婚に応じさせることができた。

●離婚原因の有無について争いのある離婚訴訟において、夫の主張する離婚原因を否定し、離婚請求棄却の判決を得た事案

■相談内容

依頼者は、同居の夫(相手方)から依頼者の暴力や浪費等を理由として離婚調停を申し立てられたが、依頼者が離婚を拒否したため、調停は不調で終了した。
その後、相手方は、依頼者に対して離婚訴訟を提起した。

■事件処理の結果

離婚訴訟でも、依頼者の暴力と浪費が主要な争点となった。
暴力については、相手方の主張する事実関係をほぼ認めつつ、依頼者が相手方への暴力に至る背景や、その後も依頼者と相手方が同居生活を継続していることを指摘して、婚姻関係の破綻を否認した。
浪費については、相手方が依頼者の浪費を裏付けるために主張する個々の事実に対して、依頼者の家計管理の実情を丁寧に説明し、浪費にあたらないと主張した。

その結果、夫婦関係が破綻しているとは認められないとして、相手方の離婚請求は棄却された。

■ポイント

依頼者の暴力の背景事情として、依頼者が子育てのストレス等で精神的に追い詰められていたことなどを丁寧に説明した結果、婚姻生活を継続しがたい事由とはいえないと判断された。

浪費に関しては、経常的な家計の支出以外に多額の支出を要する出来事があったことなどを具体的に主張した結果、離婚原因となるほどの浪費があったとは認めることはできないと判断された。

●親権について争いのある離婚事件において、依頼者を親権者とする調停が成立した事案

■相談内容

依頼者は実家に戻り、夫(相手方)と別居していた。二人の子供のうち第一子は相手方が監護し、第二子は依頼者が監護していた。依頼者は、相談前に離婚調停を申し立てていた。

調停では、第二子の親権者を依頼者とすることには争いがなかったが、第一子については双方が親権を主張したため、話し合いがつかなかった。

■事件処理の結果

離婚調停の途中で第一子の試行的面会交流を実施した。さらに、依頼者と相手方がそれぞれ第一子と過ごす様子を家裁調査官が観察するなどして調査した結果、依頼者が第一子を監護するのが相当とされた。

その後、相手方が第一子の親権者の希望を撤回したことから、第一子、第二子ともに依頼者を親権者とし、養育費の支払と面会交流の実施方法を合意して、離婚調停が成立した。

■ポイント

試行的面会交流や家裁調査官の調査の結果、依頼者の方が相手方よりも第一子の個性を深く理解していることが明かとなり、親権者としての適性が認められたものと考えられる。
また、相手方も第一子の福祉を尊重して依頼者に譲歩したものと推察される。

損害賠償請求

●分譲宅地の地盤沈下による建物被害に基づく損害賠償請求事件において、販売者側の責任が認められた事案

■相談内容

依頼者は、購入した分譲宅地の上に住宅を建てて所有していたが、宅地購入後10年以上経過した後に地盤沈下が発生し、建物が傾いた。

依頼者は、宅地造成工事に問題があったとして、宅地の販売者(相手方)に対して損害賠償を請求したが、相手方はこれに応じなかったため、依頼者は、相手方に対する損害賠償請求訴訟を提起した。

■事件処理の結果

依頼者が建築業者に依頼して地盤調査(ボーリング調査)を行ったところ、本件宅地の地盤は非常に柔らかい盛土であることが判明した。
また、宅地造成前と宅地造成後の航空写真を比較した結果、本件宅地は谷に盛土して造成されていることが判明した。さらに、一級建築士に調査を依頼し、依頼者の建物の建築工事に問題がないことを明らかにした。

その結果、裁判所は、相手方は地盤の安定性、耐久性を確保した上で販売すべき注意義務を怠ったとして、依頼者への損害賠償を命じた。

■ポイント

地盤調査の実施により地盤沈下の原因を客観的に明らかにできたこと、過去の航空写真によって宅地造成工事前の地形を明らかにすることができたこと、依頼者の建物の建築工事に地盤沈下の原因があるという相手方の主張に対して地盤の問題に詳しい一級建築士の協力を得て反論できたことなどが良い結果につながった。

借金問題

●過去に自己破産・免責許可決定を受けたことがある方の二度目の自己破産・免責許可申立が認められた事案

■相談内容

依頼者は、過去に一度裁判所に自己破産を申し立て、免責許可決定を受けたことがあったが、その後、重い病気にかかり、治療のため仕事を休まざるを得ず、収入が減少し、生活費を賄うため借り入れを重ねた結果、支払不能に陥った。

■事件処理の結果

破産自己破産・免責許可を申し立て、2度目の自己破産を申し立てるに至る経緯を詳しく説明した結果、免責許可決定を得ることができた。

■ポイント

2度目の免責許可申立の審理は厳しいことから、医師の診断書や診療計画書、依頼者の陳述書等により依頼者が病気のために稼働困難だった事実を明らかにするとともに、収入の減少や家計の収支についても関係資料により詳しく説明した。